クライムダウンのススメ

いきなりなんだよ!というタイトル。

CRAGでよく見る光景から感じたことを今回は書きたいと思います。ちょっと真面目な話なんで長文です。あしからず。

私がクライミングをはじめた15年ほど前は小学生でクライミングやっている!という人はほとんど見ていなかった。当時高校生であった私ですら珍しく「高校生ならもっと楽しいことあるでしょうに」と当時通っていたジムのオーナーに言われたくらい。

最近ではクライミングジムで小学生向けのスクールがあるほど。スクールこそ無いもののCRAGでも小学生の利用者は少なからずいらっしゃいます。

当施設では小学1年生〜4年生は保護者と一緒の利用なら可能、小学校5年生〜6年生の利用は保護者の見学があればOKとしています。

理由は簡単です。

保護者の方にもどんな危険が孕んでいる行為なのか知っていただくためです。高いところに登れば怖いし、落ちれば痛い。

先日、小学4年生の女の子がお父さんといらっしゃいました。お父さんは余裕で初心者向けコースをクリア。お父さんが軽々届いていたゴールのホールドが女の子には遠く、ひとつ高い位置に足を上げないと届かない距離だった。お父さんは「届くぞ!いける!手を伸ばせ!飛びつけ!」と下からゲキをとばしますが、女の子は悔しさ、恐怖感で泣き出してしまいます。

もし自分が逆の立場だったら、同じようなことが言えたでしょうか?もしそこで飛びついて不安定な姿勢で落ちてしまったら?「飛び降りる」という行為そのものが危険を伴うということを今一度考え直して欲しいと思います。

落ちる高さの違い

上の図は4m付近のホールドを持ってぶら下がった様子。指高(手を上にあげた高さ)はおおよそ身長×1.2mとも言われており、20歳男女の平均身長165cm(指高196cm)と7歳の平均身長122cm(指高146cm)で比較した図。単純にぶら下がっただけで52cmの差ですが、上記の女の子のように足の位置を上げることでより高い位置から飛び降りることになるのが分かるはず…

また、ジムでゴール付近からピョンピョン飛び降りる小・中学生クライマーを多く見ますが競技者としてはもちろん、将来を考えて「クライムダウンする」ことを強く推奨します。

腰椎の構造と腰椎分離症

腰椎分離症は、腰椎に圧力がかかり骨折することにより生じます。脊椎(背骨)の一部である腰椎は、第1腰椎から第5腰椎までの5つの椎骨によって構成されています。この椎骨の前方部分を椎体、後方の部分を椎弓といいます。椎弓の一部は衝撃に弱く、ジャンプや腰をねじるなどの激しい運動の繰り返しでひびが入り、さらに圧力が加わることで疲労骨折を起こすことがあります。これが腰椎分離症です。傾斜がきつく圧力のかかりやすい第5腰椎によく起こる症状です。

また、腰椎椎間板症椎骨(背骨の骨)と椎骨の間には椎間板と呼ばれる軟骨があります。背骨の動きを調節したり、背骨に加わる力を吸収するクッションの役割をしているゼリー状の髄核を線維輪という丈夫な組織が覆っています。
 椎間板に強い圧力が加わると線維輪の弾力性が失われ、ひび割れを起こします。このひび割れを修復しようとして血管や痛みのセンサーが椎間板の深部まで入りこむと痛みを起こします。これが腰椎椎間板症です。 
 過剰なスポーツなども原因となるようです。大学の運動部員を対象とした調査では、野球、競泳、ウエイトリフティ ング、ボートなどの運動部員では約60%に変性が認められ、運動をしない同世代の学生(変性率31%)の倍以上だったそうです(Hangai M,AJSM 2009)。

成長期の骨の構造

成長期にはまず骨が成長し、筋肉がそれを追いかけるように身体が作られていきます。男子の場合は高校1~2年生、女子は中学3年生くらいまでが成長期とされています。この時期の骨は、両端が軟骨になっていて、骨端線と呼ばれる部分から骨が伸びていきます。そのため、骨や関節は成人と違って構造的に弱く、強いけん引力、圧迫力が繰り返し働くと、傷ついたり変形したりして障害が生じやすいのが特徴です。

落下には強い衝撃が伴います。若いうちは痛みが出ていなくても、年を重ねるごとに変形した部位に痛みが生じる可能性があり、ヘルニアなど普段の生活にも支障をきたすような障害にもなりかねません。

撤退する勇気も大切。長くクライミングを楽しむために、持久力アップのためにもクライムダウンを心がけましょう!