休養の重要性

「登らないと登れなくなってしまう気がして」
誰しもが一度は思うことなのではないでしょうか?

先月CRAGで発売した「夏パス」ですが、大好評で月間パスを初めて購入した!というお客様も大勢いらっしゃいました。時間などを気にせず毎日登りに来れるという利点から、週1回だったお客様が週3、週4日登りにきてくれることを考えると、とても嬉しく思います。購入した本人からも「最近登れなかった課題がバンバン登れるようになってきたんですよ!」と嬉しい報告をいただきます。

が、その度に「休養も登ることと同じで大切ですよ」とお客様に説明しています。

クライミングにおいて、最も重要な筋肉は手指の筋肉です。そして手指の筋力発揮が動きを伴わず固定した状態で行われる等尺性収縮運動(アイソメトリック運動)であることがクライミングにおいて最も特徴的な点だと思います。アイソメトリックスは筋肥大よりも神経系による筋動員率の向上に効果があります。なので筋動員率の低い初心者には急激な進歩がありますが、すでに筋動員率の高い上級者ほどゆっくりとした進歩になります。

よくあるのが「初めてきた時は登れなかったのが、今回(2回目)はすぐに登れた」というケース。もちろん初めての時にやった段階で疲労していたということもあるだろうが、初めての時と2回目の時、一体何が違うのでしょうか?

筋トレして、バルクアップしましたか?ダイエットしてめちゃめちゃ軽くなりましたか?恐らくどちらにも当てはまらないと思います。初めての時に筋肉痛になったと思います。体の中では筋肉を修復しようとする働きの他に、神経を発達させ「こんな運動するよ、こんな負荷がかかるよ」と筋動員率を向上させようとさせます。先に触れたように、特にクライミングを始めたばかりの人ほど急激な進歩があるので、クライミングをやり始めると、どんどん登れるようになってきて楽しく感じます。

しかし、神経とは異なり筋肉は「破壊」→「修復」を繰り返しながら発達します。一般的には48時間から72時間レストすることにより筋繊維が徐々に修復され、そのタイミングで適切な負荷を与えることでより強靭な筋肉となることはクライミングに限らずスポーツをやっている方ならご存知のはず。

話が少し脱線気味になってしまいましたが、登れるのが楽しくてクライミングに夢中になってしまう、ということは(私が身をもって体感しているので)とーーーーっても分かるのですが、筋肉的には重度のダメージを負っている場合もあります。登れちゃうけど筋肉的には疲労している状態。この状態は無意識のうちに別の箇所に負荷をかけてしまい、怪我や障害につながる恐れがあります。それこそ長期的な休養期間が必要になって「登れなくなってしまう」恐れがあります。

クライミングジムの店主が「登りすぎです。今日は登らない方がいいですよ」というのは少し可笑しい話だとは思いますが、私は生涯スポーツとして沢山の方に長くクライミングを楽しんで欲しいのです。

2、3日登らなくてもクライミング能力は低下しません。登ること以外にもパフォーマンスアップの方法はいくつもあります。自分の体を労わりながらクライミングを楽しみましょう!